よく、「設計・施工の分離が原則である」と聞きますが、なんとなく感覚的に不正を防ぐためにそうなんだろうな、ぐらいにしか考えませんでしたが、良い機会なのでもう少し深く考えてみることにします。
なぜ、「設計・施工を分離する」のか?
この原則が、有効な解決策だとすれば、どんな問題を解決するのか?
まず設計と施工が分離された歴史を振り返ってみます。
ネットで探してみても、なかなか「検証できる事実」が見つかりませんでしたが、とりあえず見つかった情報を照査していきます。
まず、国土技術政策研究所のHPエリアに置かれていた資料(「発注方式の最適化に向けて」PDF)の中に、設計・施工分離に関する記述を発見しました。
昭和34年「土木事業に係る設計業務等を委託する場合の契約方式等について」(事務次官通達)
設計業務の受託者には原則として当該設計に係る工事の入札に参加させ、請け負わせてはならない。
この事務次官通達というものが、設計・施工分離の原則のおおもとのようです。
建設コンサルタンツ協会のHPを見てみると、「建設コンサルタントの歴史」をまとめた文章の中に、やはり同様の記述がありました。
昭和34年1月、建設省事務次官通達「土木事業に係わる設計業務などを委託する場合の契約方式等について」が発出され、任意の事業について、原則として設計業務を行うものに施工を行わせてはならないという、いわゆる「設計・施工分離の原則」が明確化されました。この原則は、設計業務(調査、計画、設計)を行う建設コンサルタントの確立と発展の基礎になりました。
この事務次官通達は、設計・施工分離の原則を定めることによって、「建設コンサルタント業の存在意義」を確立しているものということと言えそうです。すなわち、これを否定することは、建設コンサルタント業の存在を否定することになります。
危険な話に首をつっこんでしまいました。(汗)
それを裏付けるかのようにやはり、「設計・施工分離派」と「設計・施工一貫派」との対立が、ネット上でも論争をくり広げているようです。
TOCは対立を好みません。
必ずWIN−WINとなる解決策があるはずです。
ただし、その解決策を考えることは別の機会にします。
ここでは「なぜ?設計・施工分離なのか?」を考え続けることにします。
昭和34年1月の建設省事務次官通達が、絶大なる効力を発揮しているわけですが、そもそも「事務次官通達」なるものがどのようなものなのかわからないので調べてみることにしました。
事務次官通達とは、「事務次官」が出す「通達」で、「通達」とは、ビジネス支援サービス「法令の調べ方」によれば、
通達とは、国家行政組織法に基づき、各大臣、各委員会及び各庁の長官がその所掌事務に関して所管の諸機関や職員に命令又は示達する形式の一種。法令の解釈、運用や行政執行の方針に関するものが多いです。
法律ではないものの、事実上は法律と同じに守らなければならないもののようです。
有効期限は定められていなくて、改正されるまで有効というものが多いようです。
有効期限がないと言うことが少し引っかかりますね。
その時は必要に迫られて「通達」を出すのでしょうが、有効期限がないために見直す機会も失われていそうです。
社会環境が変化しても、問題にされない限りは「法律のような原則」として生き続ける。特に公的組織は、前任者の仕事を否定することを嫌う傾向がありますので、たくさんのアンティークが残っていそうです。
ところで、昭和34年1月の建設省事務次官通達がどんな内容(本文)なのか確認しようと思って、WEB検索を繰り返しましたがヒットしません。
国土交通省の告示・通達データベースを利用して、さらに検索を試みますが、なぜかこの通達はヒットしませんでした。
さて、困りました。
ここまで書いておきながら、「設計・施工分離の原則」のよりどころである事務次官通達という「事実」の存在が確認されないと、ここに書いた議論はただの空論になってしまいます。
空論にいくら時間を割いても仕方がないので、次は原則ありきではなくて、実際のメリット・デメリットを考えながら、「分離」VS「一貫」の対立を考えてみることにします。
昭和34年といえば、まだ戦争で荒廃した国土の復興時期。そこに9月の伊勢湾台風による多大な被害。
建設省は厳しい局面にさらされ、、将来を見据えて、分離と一体を機能面で比較するどころでは無かったと思います。
(内部設計、直営から)標準仕様、外部設計、工事請負の3点セットが戦後復興と高度成長を支えたわけですから、政治的・行政的な判断だったと思います。
投稿情報: u.yan | 2009/04/21 10:55
u.yanさま、コメントありがとうございました。
その時代毎に、目的を達成するためにより良いやり方をとる柔軟さがあれば良いのだと思います。
そういう面からも、ある時期の「次官通達」が絶対的なモノであるかのように、時代を超えて、設計・施工分離の原則の根拠として引っ張り出されることには、違和感を感じざるを得ませんね。
投稿情報: かつら@技術士 | 2009/04/21 18:39