「その解決策が有効であるならば、どの問題を解決するのか?」
この質問に答えるために、少し考えてみよう。
三者協議会とは、一般に公共工事の施工段階で、発注者と設計者、施工者の三者が施工に関する協議を行う場である。
基本的には、工事着手前に設計者から設計思想の伝達と施工上の留意点を伝え、施工者からは施工計画上の疑問点を質問し、発注者は必要に設計変更などを指示する場である
(工事着手後に現場条件の相違が判明し、設計上の疑義が生じた際に、三者が集まる場についてもこれに含めている場合があるようだ。)
最近発表された福岡市の三者協議会の実施要領(PDF)がわかりやすいので、論理的に検証を試みる。
円滑な工事の実施を図るためには,工事請負業者(以下,「施工者」という。)が設計図書 と現場の整合性や設計思想を十分に把握した上で工事を実施しなければならない。
ここは必要条件のロジックで書かれている。
「円滑な工事の実施を図る」というニーズを満たすためには、「施工者が設計図書と現場の整合性や設計思想を十分に把握して」いなければならない
それはなぜですか?
なぜならば、(次の段落より)「設計と施工を分離発注している」からです。
設計と施工を分離発注しているため,当該工事の詳細設計を担当したコン サルタント(以下,「設計者」という。)と施工者が異なり,設計者の設計思想や施工上の留意点が細部にわたって施工者に伝達されず,施工計画に施工の留意点等が適切に反映できない等,円滑な工事の実施に一部問題が生じている
このパートは、原因と結果の関係が述べられています。
検証してみるとこのような構造になっています。
【方針】「設計と施工を分離している」(原因) → (結果)「設計者と施工者が異なる」(原因) → (結果)「設計者の設計思想や施工上の留意点が細部にわたって施工者に伝達されない」(原因) → (結果)「施工計画に施工の留意点等が適切に反映できない」(原因) → (結果)「円滑な工事の実施に一部問題が生じている」と感じている
さて、このロジックはしっかりと通っていますか?
もし、このロジックが通っているのならば、その根本原因は見ての通りです(笑)
「設計施工の分離」という方針です。
それに対する解決策が次のパートです。
発注者と施工者にて通常行われている協議の場に,設計者を加えることで,設計思想及び設計・施工条件や施工上の留意点などの確実な伝達を行い,工事目的物の品質確保及び円滑な工事の実施を目的に「三者協議会」を行うこととする。
このパートも原因と結果の関係が述べられています。
検証してみます。
【解決策】「発注者と施工者にて通常行われている協議の場に,設計者を加える(三者協議会)」(原因) → (結果)「設計思想及び設計・施工条件や施工上の留意点などの確実な伝達を行う」(原因) → (結果)「工事目的物の品質確保及び円滑な工事の実施ができる」
円滑な工事の実施ばかりか、ここでまで一言もふれられなかった「品質」まで確保されちゃいました。(苦笑)
おそらく書いている人の頭の中では、「円滑に工事が実施される」(原因) → (結果)「工事目的物の品質が確保される」というロジックがあるのでしょう。
さて、最後のパートです。
さらに,計画・設計・施工の各分野の技術的知識を相互に交換することで,それぞれの一層の技術力向上と,施工者においては効率的な施工の実現,設計者においては成果品の品質向上を目指すものとする。
このパートも原因と結果の関係が述べられていますので、検証してみます。
【解決策】「計画・設計・施工の各分野の技術的知識を相互に交換する(三者協議会)」(原因) → (結果)「それぞれの一層の技術力向上」(原因) → (結果)「施工者においては効率的な施工の実現」「設計者においては成果品の品質向上」
良いことの連鎖するサイクルが起こるという意味ですね。
非常に良い解決策だと言うことが強調されています。
さて、このようにロジックを分解してみると、「三者協議会」という解決策は次の問題にアクセスしていると解釈できます。
解決すべき問題;「設計者の設計思想や施工上の留意点が細部にわたって施工者に伝達されない」
しかし、これはロジックを見てわかるとおり原因でありますが、さらに深い原因によって起こっている結果でもあります。
より根本的な問題解決を図るためには、真の原因にアプローチする必要があることがわかります。
真の原因の多くは、マネジメント上の方針であることが多いことを付け加えておきます。
なぜ、その方針が必要なのか?
「問題は人にはない、システムにある」というのが、TOC(制約条件の理論)の教えです。
コメント