ワンデイ・レスポンスについても、以下の視点で、検証してみましょう。
「その解決策が有効であるならば、どの問題を解決するのか?」
ワンデイ・レスポンスが公式な政策としての地位を築くことになったきっかけでもある「国土交通省直轄事業の建設生産システムにおける発注者責任に関する懇談会 中間とりまとめ 」PDF資料(平成18年9月)によれば、
2)現場の問題発生に対する迅速な対応
施工の現場において、発注段階で予見不可能であった諸問題が発生した場合、対処に必要な発注者の意思決定に時間を費やす場合があるため、実働工期が短くなり、工事等の品質が確保されないケースが発生していると指摘されている。
そのため、発注者は、「ワンディ・レスポンス」の実施等、問題解決のための行動の迅速化を図る必要がある。
と書かれています。
ここに書かれている問題構造の因果関係を調べると、下記のように分解できます。
【プロジェクトの持つ変えられない本質】施工の現場において、発注段階で予見不可能であった諸問題が発生する(原因) → (結果)対処に必要な発注者の意思決定に時間を費やす場合がある(原因) → (結果)実働工期が短くなる (原因) → (結果)工事等の品質が確保されないケースが発生している
ここで問題となっている症状は、「工事等の品質が確保されないケースが発生している」ことであり、その根本にある原因は、「施工の現場において、発注段階で予見不可能であった諸問題が発生する」というプロジェクトの持つ変えることのできない本質的な「不確実性」であると言うことのようです。
ただし、この本質にある「不確実性」は解決不可能なので、その結果である「対処に必要な発注者の意思決定に時間を費やす場合がある」という事象にアクセスすることによってこの問題を解決することができそうというのがこのロジックのようです。
「不確実性」があれば、当然「対処に必要な発注者の意思決定に時間を費やす場合がある」ことはやむを得ないと感じてしまいます。
だれが悪いわけではなく、工事というモノはそういうモノなのだと。
当然のことでは問題としてとらえにくいので、これが対処すべき事象であることを明確にするためには、少し表現を変えた方が良さそうです。
「対処に必要な発注者の意思決定に時間を費やす場合がある」→「対処に必要な発注者の意思決定に時間を費やす場合が多すぎる」と変えてみましょう。
日本人的には、自分たちの仲間の立場を悪くするようなことは言わず、曖昧な表現で済ませたいかもしれませんが、問題を正しくとらえるためには、歯に衣を着せていてはできません。
事実をしっかりと把握しなければなりません。
歯に衣を着せたままで問題を分析することは、間違った解決策を導くだけですので、はっきり言って時間のむだです。
出てきた解決策は、本当の問題を隠してしまい、真の問題解決をかえって遅らせます。
海外では、この問題をオブラートに包む、一見居心地の良い文化を「日本的調和」「和」などという言葉によって理解しています。
日本人組織は、この文化的特性があるが故に、真の問題解決が難しいとさえ言われています。
少し脱線しました。話を戻します。
表現を「対処に必要な発注者の意思決定に時間を費やす場合が多すぎる」としてみると、その原因が「施工の現場において、発注段階で予見不可能であった諸問題が発生する」というプロジェクトの持つ本質的な「不確実性」だけに特定されることは少し違和感を感じます。
不確実性の他にも何か原因がありそうです。
「施工の現場において、発注段階で設計検討不足であった事項について諸問題が発生する」あるいは「施工の現場において、設計がまだ完了していない事項がある」とした方が、よく見たり聞いたりする状況とも一致し、より現実的な感じがします。
事実を曲げずに、現場の実態をきちんと言葉として表現すべきです。
でなければ、問題は解決できません。
ここで解決策として提案されていることは、以下です。
「発注者は問題解決のための行動の迅速化を図る」必要がある。その具体的手段の一つとして「ワンディ・レスポンス」の実施等が含まれている。
まとめてみると、以下のようになります。
○解決策;発注者は問題解決のための行動の迅速化を図る
○解決すべき問題;対処に必要な発注者の意思決定に時間を費やす場合が多すぎる
ただし、このとき意思決定に時間を要する原因のうち、不確実性以外のものについては、除去が可能であれば影響の大きいものから除去すべきだと思われます。
この原因については、上で2つ例を挙げました。
「施工の現場において、発注段階で設計検討不足であった事項について諸問題が発生する」
「施工の現場において、設計がまだ完了していない事項がある」
これ以外にもあるかもしれません。それぞれの環境によって違うかも知れません。
いずれにしても、「まず最初に、どの原因を除去するか決める」ことが重要だと思います。
改善の基本は、選択と集中です。
また、ここでは一切触れられてはいませんが、「工事品質が確保できない」ことの直接的な原因になっている「実働工期が短くなる」事象に関しては、「対処に必要な発注者の意思決定に時間を費やす場合がある」という事象よりも、もっと強い原因事象があると感じます。
「実働工期が短くなる」ことが、「工事品質が確保できない」の原因であると思うのならば、なぜ「実働工期が短くなる」のか?その原因である事実をもっと正確に把握する必要があると思います。
現場の実態は、トップの耳に入っていないことがよくあります。
正しい解決策の方向性を見いだしたいと本当に思うのならば、少なくとも問題分析の際には、オブラートをすべてはがすことを期待します。
正しく現状の問題点を把握し、より良い方向性に向かえることを心より期待しています。
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