現場を管理する技術者は、品質、安全、原価、環境などさまざまな要素を管理している一方で、全く管理できていないものがある。
それは、自分である。
自分がどんな成果を上げるべきであり、そのためにどのように時間を使うべきなのかなどについては、全くと言って良いほど管理できていない。
自分を管理できていない人が、ほかの人をうまく管理できるわけがない。
逆に言えば、自分をより上手に管理できるようになれば、他の人をより上手に管理できるようになる。
ここでは、現場技術者が、成果を上げるために行うべきことの、最も基本である「自分の管理」について記述する。
1,あげるべき成果を知る
まず最初に、自分があげるべき成果が何であるかがわかっていなければ、行動できない。
行動したとても的が外れる。
個人があげるべき成果は、組織のあげるべき成果と密接な関係がある。
組織のあげるべき成果に対して、自分の強みを生かしてどんな貢献ができるのかを考え抜くことによって、自分のあげるべき成果がわかる。
組織の成果に貢献しないことは、一見優れたものに見えても成果たり得ない。
ただの自己満足に過ぎない。
※ワークライフバランス(仕事と私生活とのバランス)の観点からは、さらに進んで個人のもつ価値観にまで踏み込む必要がある。
個人の持つ価値観に照らして、仕事と家庭、個人の優先順位をつける必要がある。
2,自分の時間を知る
時間は人類にとって、最大の制約資源である。
過ぎ去った時間は取り戻すことができない。
誰にとっても、時間は常に平等であり、また常に足りない。
時間を管理するためには、まず、自分の時間がどのように使われているのかを知らなければならない。
そのために、時間を記録することから始める必要がある。
時間が何に使われているか記録し、分析する。
自分が果たすべき成果を基準として考えたときに、その時間が以下のどれに属するの分類する。
1)重要かつ緊急なこと
2)重要だが、緊急ではないこと
3)重要ではないが、緊急なこと
4)重要でも緊急でもないこと
もし、3)と4)に多くの時間が使われているのならば、それは時間を無駄にしている。
1)の時間ばかりであれば、緊急中毒である。
2)が多ければ、長期的な視点から成果に集中できていると言える。
しかし、残念ながら多くの人はそうならないはずである。
3)および4)に属するものは、時間を浪費している可能性が高い。
そもそもする必要のない仕事、何ら成果を生まない仕事を見つけて、捨てる。
あるいは、ほかの人間でもやれることが無いかを考える。
あるいは、自分のコントロール範囲内における時間浪費の原因を排除する。
一方で、自分のコントロール範囲外にも時間浪費の原因はある。
それは、マネジメントと組織構造の間違いに起因している。
システムの欠陥や先見性の欠如があるか、人員が過剰であるか、組織構造に欠陥があるか、または、情報に関わる機能障害がある。
3,自由になる時間をまとめる
時間を記録・分析することで、仕事が整理整頓できる。
整理とは捨てることから始める。
いらないものが捨て終わったならば、初めて整頓する。
捨てずに整頓することは時間の浪費である。
重要な仕事ほど、まとまった時間が必要である。
時間は、意図的にまとめなければ、常に粉々になる。
そのためには、これから使う時間を見えるようにすることが有効である。
現場管理においては、行われるべき時間が決まっている日々のルーチンワークがある(朝礼、現場巡視、昼の打ち合わせなど)。
週毎、月ごとに決まっている仕事もある(週間、月間工程打ち合わせなど)。
それらは、使おうとする時間をまとめるための制約となる。
それらルーチンワークのための残った時間から、工程の進捗に対応した緊急仕事のために時間が使われる。
その後に残った時間がようやく、本当に重要な仕事に割り当てられる時間である。
その重要な仕事のための時間は、まとまった時間としなければ、何もできない。
まとまった時間を生み出すためには、ルーチンワークと緊急仕事の時間を、意図的に配置しなければならない。
4,時間の使い方
人間の脳は機械ではない。働ける時間は限られている。
一般に脳の活力が高いのは午前中だと言われる。
午前6時から12時までの6時間がもっとも創造的な仕事に使われるべき時間であるとされる。
仕事の能率は、午前中は、午後の2倍に相当するという。
建設業の現場における現場管理者の多くは、昼間は現場に常駐し、夜は事務所に戻って書類等を残業して行うことが通例となっている。
それは人間の脳の働きから考えれば仕事の質を落とす行為となる。
夕方から夜中までの残業仕事を、朝の早出仕事で半分の時間で済ませることができるならば、仕事の質も個人の生活も良くなる。
創造的な午前中の貴重な時間を、いかに重要な仕事に割り当てることができるか。
それによって、仕事と生活の質に大きな差が生まれる。
時間の意図的な配置には、このような配慮も重要である。
創造的な仕事は午前中に、報告的な会議などは午後に。
5,一つのことに集中する
自分の時間に仕事を配置するとき、仕事には優先順位をつけて配置する。
それら仕事は、一つの仕事が終わるまで、次の仕事に手をつけてはいけない。
同時に行くつものことを行うことは、曲芸である。
皿回しと一緒である。
成果を上げるためには、もっとも優先度の高い、一つのことに集中することが必要である。
そのためには、その仕事を終えるのに十分な時間の固まりを生み出しておかなければならない。
しかし、現代の技術者の多くは、集中が保てない。
何か仕事を始めると携帯電話が鳴る。
固定電話が鳴る。
訪問客が来る。
メールが来る。
これらすべては、その仕事を終わらせるために必要な情報をもたらすのでなければ、単なる邪魔な存在である。
それらを受け取る時間もまた、計画的に配置されるべきである。
でなければ、時間はいくらでも細かく切り刻まれる。
6,強みによって貢献する
人は不完全な生き物である。
すべてに完璧な人間など存在しない。
同じように、すべてに完璧な現場技術者など望める者ではない。
人には必ず欠点がある。
しかし、同時に”強み”(長所)も必ずある。
人は、強みによって貢献するとき、最大の成果を上げることができる。
組織においては、個人が得意とするものをいかに組織の成果に結びつけるかが、重要である。
不得意なことは不得意なりにしかできない。
嫌いなことはがんばってもなかなか上手にできない。
しかし、得意なことは容易に上達する。
もっと高いレベルに飛躍できる可能性が高い。
各個人が、おのおのの強みによって組織に最大限に貢献するとき、組織は最大の成果を得ることができる。
各個人は、その強みを日常の中で、計画的にのばしていく必要がある。
弱みはそれが他人迷惑をかけない程度まで改善できれば十分である。
このとき組織は、それぞれの人の弱みをカバーし合い、それぞれが強みを発揮できるように機能すべきである。
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